既設構造物に近接して杭打ち工事、掘削等の基礎工事を実施すると、周囲の地盤が乱されることにより地中の変位や変形が生じ、この影響範囲内の既設構造物にも変位や変形が生じる。その影響が大きくなると構造物の機能や安全性に障害が生じる。
従って、影響範囲の予測と周辺地盤の変位量の管理がポイントとなり、必要に応じて近接施工の対策工を実施する必要がある。
影響範囲の予測には、有限要素法等の解析による方法と実験や経験を重視する方法があり、対策工法としては周辺地盤の改良や周辺地盤や既設構造物の補強があります。
以下に代表的な基礎工法について、近接施工での周囲に影響を与える要因について示します。
①場所打ち杭
杭周辺および先端部の地盤が緩みやすく、また孔壁が崩壊した場合には近接する既設構造物へも大きな影響を与える恐れがある。
②既成杭
打ち込まれた杭の体積分だけ土が側方に押し拡げられることにより、地盤の影響は比較的大きいが、その影響は杭種によってかなり異なりコンクリート杭のような閉塞杭と比較し開端杭である鋼管杭では比較的小さい。
打ち込み杭の場合のような地盤の側方への押し拡げもなく低振動工法でもあるので、近接施工には有利である。ただし、砂層でのボイリングの発生や杭周辺地盤を緩める恐れがある。
③オープンケーソン工法
ケーソン工法では、ケーソン沈設の際の周面摩擦抵抗を減少させるために、通常フリクションカッターが設けられている。このフリクションカッターはケーソン沈設時にケーソン本体と周辺地盤との間に空隙を生じるため、この空隙に土砂が移動して地盤変位の原因となりやすい。
④ニューマチックケーソン工法
オープンケーソンの場合と同様、フリクションカッターによる影響が大きいと考えられる。
⑤鋼管矢板基礎
鋼管矢板打設時に関しての留意点は、鋼管杭の打設の場合と同様である。打撃工法では打ち込みにともなう地盤の側方への押し拡げ現象等が考えられるが、中掘り工法等を採用すれば影響を少なくすることができる。
また、「近接工事設計施工標準」(東日本旅客鉄道(株)、2003.04)では下図のように鋼管矢板基礎の近接工事での適用性を示している。

近接施工の事例を下表に示す
| 橋梁名 | 事業者 | 時期 | 形状 | 平面寸法 (m) |
基礎長さ (m) |
近接構造物 | 近接距離 (m) |
施工方法 |
| 荒川河口橋 (一般国道357号) |
建設省関東 地方建設局 |
1990 | 円形 | 17.6×17.6 | 51.0 | 首都高速湾岸線荒川河口橋、 JR京葉線荒川放水路橋 |
4.6 | 打撃工法 |
| 荒川横断橋 (放射第16号) |
東京都 | 1997 | 小判形 | 27.3×21.5 | 35.1 | 営団地下鉄東西線 | 5.6 | 中掘り工 |
| 常磐新線 荒川橋梁 |
日本鉄道 建設公団 |
1998 | 小判形 | 17.8×10.3 | 52.5 | JR常磐線、 営団地下鉄千代田線 |
2.2 | 打撃工法 |
| 第2名神飛島 高架橋P52 |
日本鉄道 建設公団 |
1997 | 小判形 | 15.1×8.8 | 全長74.6 | 県道第2筏川大橋 | 3.35 | 打撃工法 |

荒川河口橋(一般国道357号)の横断図(出典:基礎工1993.11)